図1 北京汽車が描く、自動車の窓ガラス広告
図1 北京汽車が描く、自動車の窓ガラス広告
自動車の移動先の場所に適した広告を表示する。多くの人の目に付き、露出効果は高いとする。(出典:北京汽車の講演資料のスライド)
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図2 北京汽車と小米が講演した「Display Innovation China 2015 / Beijing Summit」
図2 北京汽車と小米が講演した「Display Innovation China 2015 / Beijing Summit」
毎年北京で開催されているディスプレーの専門カンファレンス。2015年は10月に開催された。
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 「将来、自動車メーカーは広告に収益源を求めるようになっているかもしれない」。中国の代表的な自動車メーカーである北京汽車(BAIC Motor社)の総裁助理(Assistant to President)の栄輝(Hui Rong)氏は、「Display Innovation China 2015 / Beijing Summit」(2015年10月に北京で開催されたディスプレー関連のカンファレンス)の講演で、こう発言した。

 例えば、自動車が走ったり止まったりしている場所に適した広告を、窓ガラスに表示する。クラウドベースの技術を活用し、北京汽車の自動車の窓ガラス広告を一斉に変えたりする。「窓ガラスに貼れる、画像表示が可能な薄いフィルムが欲しい」と、栄氏は会場のディスプレー関係者に呼びかけた。将来、自動運転が実現すれば、フロントガラスにも広告を表示できるようになり、自動車メーカーの収益源になる可能性があると、栄氏は語った(図1、図2)。

自動車メーカーはサービス業へ

 栄氏は講演で、自動車のビジネスモデルは「製造業からサービス業へシフトする」と切り出した。北京汽車はこれまで、自動車というハードウエアの販売と整備で利益を稼いできたが、「将来は一変する」と栄氏は予測する。

 その理由の1つに挙げたのが、自動車産業の「アセットライト化」と「集積化」である。自動車は現在のように多額の設備投資によって建設した大規模工場で製造するのではなく、もっと簡単な設備で製造できるようになると、栄氏は見通す。これがアセットライト化である。パーツを簡単な構造にしたりすることは必要だが、将来はそうしたパーツを組み立てて自動車を製造するような時代が到来すると、栄氏は展望する。

 その結果、自動車メーカーが自動車を製造するのではなく、「販売店が自動車を設計し、組み立てるようになる」と、栄氏は語った。販売店が自動車の設計から組み立て、販売までを担う。これが集積化である。パーツ管理のための仕組みも簡素になり、コスト低減につながると、栄氏は指摘する。

 消費者に近い存在の販売店が自動車を設計、製造することで、自動車の「パーソナライズ」のニーズにも応えやすくなる。自動車の購入様式が変わり、「3Dプリンターを活用し、洋服と同じようにオーダーメードで自動車を作り、消費者に提供する時代が来る」と、栄氏は語った。