大手広告代理店が、“ハードウエアスタートアップ”になる。博報堂グループは、電子機器を開発し、一般販売に乗り出す。ハードウエアスタートアップの起業が盛んだが、もともとスマートフォン向けアプリケーションソフトウエア(アプリ)などを作っていたソフトウエア開発者が興した企業が多い。博報堂のような広告代理店が新規事業としてハードウエアの開発に乗り出すのは珍しい。
博報堂はこれまで、他社の電子機器の製品企画やそれを利用したサービスの開発を支援することが多かった。これまでにない革新的な事業や市場を作る“起爆剤”として、自らIoT機器やウエアラブル機器などの開発に乗り出した。ハードウエア開発のハードルが下がってきたことが同社を後押しした。異業種の企業でも、自らのアイデアをそのまま製品化し、顧客のデータを集めたりすることが容易になってきたといえる。
電子機器の開発に積極的なのが、博報堂のグループ企業TBWA HAKUHODOにおける新組織「TBWA HAKUHODO QUANTUM」(以下、クオンタム)である注1)。クオンタムは、これまでの広告の枠にとらわれない新しい事業に取り組む組織として、2014年7月に設立された。
クオンタムは2015年12月、自社製品ブランド「QM(組む)」を立ち上げた。その第1弾製品として、ブランドデザインのコンサルタントであるartless(本社・東京)の川上シュン氏と共同で、LED照明「kizuki.」を開発(図1)。2015年12月1日に営業を始めた宿泊施設「ホテルリズベリオ赤坂」がロビーに設置した。