NTTは、光ファイバーなどを用いた非ノイマン型計算システム「Quantum Neural Network(QNN)」を24時間稼働させ、2017年11月27日から無償でオンラインで利用可能にした注1)。内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の下、国立情報学研究所(NII)や理化学研究所と共同開発した。
注1)システムは当初、大きなテーブル上に実装していたが、今回、ラック1台に収めたシステムを新たに開発した。消費電力は、約1kWである。24時間の安定稼働に成功したのも、温度変化に敏感なシステムを、ラック内に収めることで、温度変化を0.1℃以下に抑え込めるようになったからだという。
スピンの代わりに光パルス
QNNは、いわゆるイジング(Ising)マシンの一種である。イジングマシンは、互いに磁界を及ぼす多数のスピンから成り、外部磁界などとの関係から、各スピンの向きがどのようになるかを調べる物理実験モデルである。このイジングマシンは理論上、古典的コンピューターが扱うほとんどの問題を解くことができる。特に、ある制約条件の下に、最適な組み合わせを調べる「組み合わせ最適化問題」に対して非常に有用であることが知られている。
QNNではスピンや磁石の代わりに、長さ1kmの光ファイバーをループ状につなぎ、その上を2000個の光パルスを周回させながら、パルス同士をFPGAなどを用いて人工的に結合させることで、イジングマシンを再現した(図1)。この光パルスが、スピンの上向きか下向きかに対応する、「1」と「-1」といった2つの状態を同時に持ち得る「量子ビット」の代わりとなる。