シャープ 栃木工場の正門
シャープ 栃木工場の正門
(日経エレクトロニクスが撮影)
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栃木工場の液晶テレビ生産ライン(1)
栃木工場の液晶テレビ生産ライン(1)
(日経エレクトロニクスが撮影)
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栃木工場の液晶テレビ生産ライン(2)
栃木工場の液晶テレビ生産ライン(2)
(日経エレクトロニクスが撮影)
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堺工場から運び込まれた液晶パネルを梱包から取り出す。
堺工場から運び込まれた液晶パネルを梱包から取り出す。
(日経エレクトロニクスが撮影)
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液晶パネルをフレームで固定する作業は、人が行っていた。
液晶パネルをフレームで固定する作業は、人が行っていた。
(日経エレクトロニクスが撮影)
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工場の環境や稼働状況が一目で分かるように液晶ディスプレーに表示している。
工場の環境や稼働状況が一目で分かるように液晶ディスプレーに表示している。
(日経エレクトロニクスが撮影)
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液晶テレビの筐体が傾斜を滑り降りるようにラインに送り込まれる。モーターを不要にするための工夫の1つである。
液晶テレビの筐体が傾斜を滑り降りるようにラインに送り込まれる。モーターを不要にするための工夫の1つである。
(日経エレクトロニクスが撮影)
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 シャープが世界に先駆けて発売した85型8K液晶モニターや、テレビ事業の今後のけん引役と位置付ける60型以上の4K液晶テレビ――。これら同社の最先端液晶製品の製造を担うのが、栃木県矢板市にある「栃木工場」である。同工場の報道関係者向けの見学会を、シャープは2015年11月19日に開催した。

巨大な4K/8K液晶パネルが並ぶ

 製造現場に入ると、堺工場(堺ディスプレイプロダクト)から運ばれてきた最先端の液晶パネルが生産ラインに載せられ、バックライト部品や電源基板、筐体などが次々に組み付けられていく様子が、目に飛び込んできた。見学会の当日、2本の生産ラインでは、60型の4K液晶テレビが組み立てられていた。これらの生産ラインは、より大画面の70型や80型の4K液晶テレビの組み立ても可能。工場内には空きスペースもあり、8K液晶モニターの受注時には、こうしたスペースで個別に組み立てるという。

 生産ラインには、随所に現場の工夫が見られた。例えば、自社の他工場にある中古設備を活用し、安価な手作りの生産ラインを構築している。1本の生産ライン上で液晶パネルに部品を組み付け、テレビとして完成させる一貫生産とすることで、工数削減を図った。また、生産ラインの故障の原因になりやすく、工場の電力消費も増大させるモーターは極力使わないようにしたという。例えば、生産ラインの一部では、傾斜を設けることによって、モーターを使わなくても部品が次の工程へ進むようにしている。

 液晶パネルは静電気によって不具合が生じるため、液晶パネルを人の手で触れずに済むように、パネルの供給や移載をはじめ、バックライト用の光学シートの移載やねじ締めなど、ほとんどの工程を自動化している。テレビの大画面・高精細化によって、技術的な難しさは増すが、改善・改良によって乗り越えてきたという。こうしたノウハウの積み重ねが、「85型8Kの大画面・高精細液晶モニターの生産にも生きている」(同社 コンシューマーエレクトロニクスカンパニー デジタル情報家電事業本部 生産統轄部 統轄部長の魚穣司氏)。

 栃木工場には、液晶テレビの開発拠点である「技術センター」も同居する。開発・設計・生産の各部門が同一敷地内にあることも強みだとする。毎日夕方に関連部門が集まり、当日の品質情報を共有し、その日のうちに工程へのフィードバックを図っている。最先端製品の量産化でも、開発・設計・生産が一体であることは「強みになる」(魚氏)。液晶テレビでは「額縁」と呼ばれる画面周囲部の幅がどんどん狭くなっている。この結果、ある時、筐体を止めるためのビスの直径を6mmから3mmに小さくしなければならなくなった。この情報が開発・設計部門から生産部門に早期に伝わったことで、3mm径のビスを打てる自動装置の開発と立ち上げを、液晶テレビ新製品の量産開始に間に合わせられたという。