自動車で培ったセンサーなどの技術を鉄道分野に生かす。そんな動きが活発化している。その好例が、ドイツBosch Engineering社の取り組みである。同社は、2015年11月に開催された「第4回 鉄道技術展」で、自動車の運転支援に利用するカメラやミリ波レーダーの鉄道応用事例を発表した。

 応用先として検討しているのが、LRT(Light Rail Transit)といった路面電車である。既にドイツのフランクフルトやハノーバーで実証実験中だという。

線路や自動車、歩行者を検知

 「多目的カメラ」と呼ぶ単眼カメラで線路を検出したり、物体を認識したりする(図1)。「中距離レーダー」と呼ぶミリ波レーダーで、物体までの距離を算出する(図2)。この2つのセンサーで得られた結果を基に、例えば自動車が線路そばに存在したり、ブレーキが不十分だったりすると、路面電車の運転者に警告を出す。単眼カメラとミリ波レーダーの制御や測定結果の分析に、「制御ユニット」と呼ぶECUを利用する(図3)。

図1 「多目的カメラ」の外観と主な仕様
図1 「多目的カメラ」の外観と主な仕様
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図2 「中距離レーダー」の外観と主な仕様
図2 「中距離レーダー」の外観と主な仕様
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 カメラとミリ波レーダー、ECUのハードウエアは自動車向けと同じ。例えば、カメラのダイナミックレンジは110dBと広い。そのため、路面電車がトンネル、あるいは高架下から出るといった、暗い場所から明るい場所へ急に移動する場面でも、線路を正しく捉えられるという。

 ミリ波レーダーは76G〜77GHz帯を利用する。雨天でも対象物からの距離を測定できる点を特徴にうたう。最長で160mの物体の検出が可能だという。

 ハードウエアは自動車向けと同じだが、認識アルゴリズムといったソフトウエアは鉄道向けにカスタマイズしている。路面電車であれば、カメラは線路の検知機能を新たに盛り込んだ。

図3 「制御ユニット」の外観と主な仕様
図3 「制御ユニット」の外観と主な仕様
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