米Western Digital社が開発したMAMR方式の記録ヘッドの模式図。ヘッドのギャップに挿入したスピントルク発振素子(STO:Spin Torque Oscillator)で高周波磁界を発生させ、保磁力が高く熱揺らぎに強い記録媒体にデータを書き込めるようにする。(画像:Western Digital社)
米Western Digital社が開発したMAMR方式の記録ヘッドの模式図。ヘッドのギャップに挿入したスピントルク発振素子(STO:Spin Torque Oscillator)で高周波磁界を発生させ、保磁力が高く熱揺らぎに強い記録媒体にデータを書き込めるようにする。(画像:Western Digital社)
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 HDDの将来展望が一気に開けた。2017年10月、米Western Digital(WD)社はHDDの記録密度を大幅に高めるマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)方式の実用化にめどをつけたと発表。この技術を適用した製品を2019年に出荷し、2025年までにデータセンターなどに向けた3.5インチHDDで40Tバイト以上を実現すると表明した(図1)。

図1 60TバイトのHDDも視野に
図1 60TバイトのHDDも視野に
米Western Digital社は2019年にもMAMR方式を採用したHDDを出荷する計画だ。同社はMAMR方式によりHDDの面記録密度は年率15%増のペースで拡大し、2025年までに40Tバイト以上の製品を実現できるとしている。また、MAMR方式を使えば面記録密度4Tビット/インチ2(ディスクを8枚内蔵する3.5インチ型HDDの容量で60Tバイト弱)が可能になるという。これらの主張から推測すると、2028年ごろに60Tバイト程度のHDDを実現できることになる。2018年以降の容量の値は本誌の推測で、垂直記録方式の値はSMR方式を使わない場合。
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 現在3.5インチHDDの容量は最大14Tバイト。WD社がいわゆるSMR方式を使って実現し、サンプル出荷中だ。今後も容量は伸び続け、2020年ごろに20Tバイトになると見られていた。ただし、その先は不透明だった。記録密度向上の原動力だった垂直記録方式の効果が薄れてきたからだ。最近では装置に内蔵するディスクを増やしたり、装置の使い勝手が変わるSMR方式を導入するなどして、装置当たりの容量を1年で2Tバイト程度増やすのが精いっぱいだった。

 この状況が変わる。WD社はMAMR方式の導入で面記録密度を年率約15%増で増やし続けると主張する。2028年には60Tバイトを実現できる計算だ。WD社はMAMR方式で面記録密度4Tビット/インチ2以上を達成できるとも表明。現在の14Tバイト品がちょうど1Tビット/インチ2程度なので、容量に換算すると56Tバイト以上に相当する。