ICT企業を発信源としたIoT(Internet of Things)への期待が、エレクトロニクス産業全体に広がっている。IoTに関連する分野・企業は数多く、「IoTへの参入宣言」だけでは気づいてすらもらえない状況である。差異化ポイントを訴えてリーダー役にならないと、期待したような成果は得られない。

図1 江坂忠晴氏 
図1 江坂忠晴氏 
日経エレクトロニクスが撮影。
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図2 多数のフロントエンド機器を持っている 
図2 多数のフロントエンド機器を持っている 
アプリケーションを問わず、さまざまな機器を製品として提供している。そこからバックエンドのクラウド側へ守備範囲を広げる。パナソニックの図。
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 こうした混沌としたIoT市場で、パナソニックは「現場発のIoT」をキーワードにして差異化を図っている。その意味をAVCネットワークス社 イノベーションセンター 所長 江坂忠晴氏に聞いた(図1)。「IoTの最前線の現場には、我々の機器が多数使われている。家庭、事務所、工場など、あらゆるフロントエンドにこれだけ多数の機器を提供しているのはパナソニックだけ(図2)。現場の機器から、IoT市場を取りに行く」(同氏)。

 江坂氏によれば、機器を単に売るだけではなく、機器の導入によって顧客がその効果を得られるためのノウハウがパナソニックにはあるという。例えば、監視カメラの場合、カメラの設置方法や、収集した画像の解析方法、さらに解析結果の活用法などがパナソニックに蓄積されており、それを顧客ごとに最適化して提供している。

 顧客との接点という意味では、ICT企業に比べてかなり優位な立場にある。ただし、現在のままだと、ICT企業の下請けになり、IoTのフロントエンド機器を納入する役割にとどまる恐れがあるのも事実。そこで、これまでの機器事業で培ってきた技術やノウハウを武器にフロントエンド側からビッグデータ解析のバックエンド(クラウド)側へと守備範囲を広げる。

 具体的には、培ってきたノウハウや技術をモジュール化して外部に提供することで、他社の機器にも搭載していく。さらに、このノウハウや技術と連携するクラウド上のサービスを開発し、顧客にフロントエンド機器からクラウド上の解析までのトータルサービスを提供することを目指す。ここで、ノウハウとは、例えば、センシングしたデータの処理、収集した画像の分析、さらに、ハッキングを防止するセキュリテュー技術などを指す。