当初の能力は低くても、経験を積むとともに、どんどん賢くなっていく――こうした特性を備えた人工知能(AI)の実現を狙う技術を富士通研究所が開発している。利用者の好みを類型化した数理モデルを、新たな情報が追加されるごとに自動的に精緻にしていける。同社は「自律成長するAI」と呼ぶ。
福岡県糸島市と組んで、同市への移住希望者と同市内の候補地を適切にマッチングするシステムに、この技術を適用する(図1、発表資料)。移住希望者と市の担当者が相談する場で実際にシステムを利用して効果を確かめる。九州大学マス・フォア・インダストリ研究所富士通ソーシャル数理共同研究部門も協力し、2016年11月~2017年3月の期間で実施する注1)。実験結果をもとに改良を進め、富士通のAI技術「Zinrai」の一部として2017年度中にも実用化する計画だ。移住の相談だけでなく、医師と患者、企業間といったさまざまなマッチングシステムへの応用を見込む。