スマートフォン(スマホ)向け電子部品大手の太陽誘電が攻勢に出る。東京都青梅市にある青梅事業所の製造設備を、2015年秋から本格稼働させた。欧米や中国のスマホメーカーから高周波フィルター部品への引き合いが活発なため、今後3年で生産数を倍増させる方針だ。通信デバイス事業の売り上げ規模を17年度に700億円と、14年度実績の2.5倍に高めることを目指す。

 青梅事業所は、太陽誘電子会社の太陽誘電モバイルテクノロジーの本社で、スマホの高周波回路向けフィルター部品など、通信デバイス事業の中核拠点である。太陽誘電が2010年に富士通から取得した富士通メディアデバイスが母体で、当初は長野県須坂市にある須坂工場で表面弾性波フィルター(SAWフィルター)などを製造していた。

 その須坂工場の製造能力がスマホ需要の伸びを背景に限界を迎えたため、「全国行脚して工場を探し回っていた」(太陽誘電 通信デバイス事業部 事業部長で執行役員の伊形理氏)。2014年4月に日立製作所が青梅市に保有していた半導体工場の土地と建物を取得し、14年度下期から自動製造装置などの搬入を進めてきた。青梅事業所は延べ床面積が5万3000m2で、クリーンルームの設置面積は須坂工場の2倍となり、製造能力は3倍以上に高められる見込みだ。

図1 青梅事業所でフィルター増産
図1 青梅事業所でフィルター増産
2014年4月に日立製作所から取得した青梅事業所(a)。SAWフィルターやFBARフィルター、デュプレクサなどの生産(前工程および後工程)と開発を行う(b)。