円内は、バクテリアがCdS(黄色の粒子)を細胞表面に付着させている様子である(図:Kelsey K. Sakimoto)
円内は、バクテリアがCdS(黄色の粒子)を細胞表面に付着させている様子である(図:Kelsey K. Sakimoto)
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 米University of California, Berkeley校(UC Berkeley)の研究者であるKelsey K. Sakimoto氏などが、食品を基に酢酸(CH3COOH)を出すバクテリアに光合成の機能を付加することで、光と水(H2O)と二酸化炭素(CO2)から高効率に酢酸を合成することに成功したと発表した。バクテリアの種類などを選べば、油、食品、医薬品、化学薬品などの光からの合成が実現する可能性があるという。

“餌”でバクテリアを改造

 今回の技術はまず、嫌気性の酢酸産生菌「Moorella thermoacetica」に必須アミノ酸のシステインと無機のカドミウム(Cd)を“餌”として与えることから始まる。すると、バクテリアはシステイン中の硫黄(S)とCdから光半導体の一種である硫化カドミウム(CdS)のナノ粒子を生成し、服のように身にまとう。

硫化カドミウム(CdS)=光半導体材料の1つ。街灯の照度センサー、ディスプレー用量子ドットや医療用発光材料として使われている。CdS自体の毒性は低いとされる。

 このバクテリアに光、H2OとCO2を供給すると、バクテリアは酢酸を“生産”する。標準太陽光(AM1.5G)に対する量子効率は、2.0~2.5%。植物の光合成は多くが同0.2~1.6%であるため、植物を大きく超える効率を実現できたとする。