センサーデータをはじめとするビッグデータを企業など組織の壁を越えて流通させるデータ流通市場を、安心して使えるようにする業界ルール作りが2017年秋にも始まる。政府もデータ流通に関わる事業者が一定の要件を満たすことを求める政策を実施する方針である。

  ヒトやモノの活動に伴って生み出される多様なデータは、その価値が認識されつつある一方、十分に活用されていない1)。業界ルールや政策の導入によって、他社が集めたデータを入手し活用する上での課題が解消しそうだ。

他事業者のデータも閲覧可能に

 総務省と経済産業省が主導して立ち上げた産学組織のIoT推進コンソーシアムは、さまざまなデータ流通事業者を相互連携させる方針を固めた。方針は、同コンソーシアム下部組織の「データ連携サブワーキンググループ」が作成した報告書「データ流通プラットフォーム間の連携を実現するための基本的事項」にまとめ、同コンソーシアムと両省の連名で2017年4月末に公開した。

 コンソーシアムに参加する企業が中心となって、2017年秋までに業界団体を立ち上げ、この団体が同報告書の方針を業界ルールとして定着させる。サブワーキンググループには、国内でデータ取引サービスを提供しているエブリセンスジャパン(米EverySense社の日本法人)や日本データ取引所、同サービスに関わる意向を示しているオムロンなど10数社が参加している。

 データ流通事業者は、ビッグデータをある企業から別の企業へ販売する市場や相対取引の場を提供している。ここへ来て相次いで事業者がサービスを始めており、これから参入する事業者もある(表1)。例えばKDDIは、同社の顧客が持つIoTデータと同社の提携企業が持つデータを組み合わせて活用できるようにするサービスの提供を2017年6月下旬に始める。

表1 IoTデータの流通サービスが相次ぎ開始
表1 IoTデータの流通サービスが相次ぎ開始
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 データ流通市場が乱立すると、ユーザーが事業者を探した上で、さらに各事業者に所望のデータの存在を問い合わせるのが非効率となるため、事業者間で相互連携させる。

 具体的には、ユーザーが所望のデータを1つの事業者に問い合わせる(検索する)と、別の事業者が持っているリストも閲覧できるようにする(図1)。各事業者間で検索情報が流通するパスを設けるとともに、同じ意味のデータを同一表現で記述する、データ項目(種類や単位など)を共通形式で記述する、これらを検索する際のインターフェース(API)を共通化することで実現する。

図1 データ流通市場のAPIの連携を可能に
図1 データ流通市場のAPIの連携を可能に
異なるデータ流通市場を相互連携させる動きが出てきた。IoT推進コンソーシアムは、データを検索するためのインターフェース(API)仕様の共通化を求めている。これとは別に同コンソーシアムは「データの利用権限に関する契約ガイドライン」を2017年5月30日に公開、ビッグデータを企業間でやり取りする際の契約の指針も示した。(図:「データ流通プラットフォーム間の連携を実現するための基本的事項」)
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 センサーデータの形式を規定する仕様については、既に複数の国際標準などが存在するため、既存の仕様を組み合わせて共通仕様の策定を短期に完了させる。