2016年4月に開催されたフランスSchneider Electric社のプライベートショーにて講演する同社のChairman兼CEOのJean-Pascal Tricoire氏
2016年4月に開催されたフランスSchneider Electric社のプライベートショーにて講演する同社のChairman兼CEOのJean-Pascal Tricoire氏
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 さまざまなモノをネットワークに接続するIoT(Internet of Things)の取り組みがますます増えている。例えば、産業分野では、ドイツが主導するIndustry 4.0や、アメリカが主導するIndustrial Internet Consortium(IIC)のもと、IoTによって工場のラインの稼働率の向上や、設備や施設の使用電力の削減を狙う。

 ただし、今のところ、IoTを十分に活用できていないケースが多い。例えば、現在のシステムは複数の独立したサブシステムから構成されるため、サブシステム間の連携が難しいためである。

 また、機器をネットワークに接続してデータを収集するだけでは、新たな価値を生むことはできないという現実もある。データを価値に変える仕組みが必要になる。

共通化でシステム間の連携を促進

 フランスの大手重電メーカーSchneider Electric社はIoTの活用に積極的な企業の1つである。同社はIoTを活用して、スマートシティー事業やスマートグリッド事業を200都市以上で進める(図1)。その原動力になっているのが、さまざまな応用分野で共通に使えるシステム基盤「EcoStruxure」である。

図1 スマートシティーやスマートグリッド事業を世界200都市以上で展開
図1 スマートシティーやスマートグリッド事業を世界200都市以上で展開
フランスSchneider Electric社は、送配電などの電気インフラや、工場やデータセンターのエネルギー管理システムなどを世界各国で手掛ける。
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 2016年4月1日にフランスのパリで開催した同社のプライベートショーの基調講演においてChairman兼CEOであるJean-Pascal Tricoire氏は、IoTを今後の同社の強みとするべくEcoStruxureの利用を加速していく方針を表明した。このシステム基盤を利用することで、異なるシステム間での連携を容易にし、エネルギー効率や業務効率などを向上できるという。

 例えば、今回のプライベートショーでは、EcoStruxureを使ってビルのエネルギー管理とセキュリティー管理を連携させたシステムが展示され、注目を集めていた。入退室情報や従業員の位置情報を照明制御や空調機制御に利用することで、部屋の状況に応じて照明や空調を自動で最適化する(図2)。

図2 社員証に取り付けたRFIDバッジ(右)を活用
図2 社員証に取り付けたRFIDバッジ(右)を活用
会議室の天井などにRFIDの受信機(左)を取り付け、室内の人の位置をシステム側で把握して、照明を調整する。プライバシーの保護のために、システム側には人の大まかな職位のみが伝わる。
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 EcoStruxureは4つの階層からなる(図3)。このうち特徴となるのが下から2番目の「ローカルな制御」層である。例えば緊急時などの制御は、クラウドから制御するのではなく、ローカルで制御する。最下位の層は同社のハードウエアを示しているが、他社製品も利用できるということだった。

図3 異なる分野で共通に使えるシステム基盤を利用
図3 異なる分野で共通に使えるシステム基盤を利用
Schneider Electric社は、さまざまなシステムを同じシステム基盤上で構築し、システム間の連携を容易にする。
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 なおEcoStruxureはローカルとクラウドを一体にしてもローカルだけでも使用可能である。