キヤノン、大日本印刷(DNP)、東芝メモリ(旧東芝)および韓国SK Hynix社の4社は、2017年2月末に開かれた半導体露光技術の国際会議「SPIE Advanced Lithography 2017(SPIE)」にそれぞれ登壇し、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)技術がNANDフラッシュメモリーの量産適用に大きく近づいた状況を発表した。4社はほぼ一体となってNILの開発に取り組んでいる。
欠陥は10年で100万分の1に
インプリント(刻印)は、溝などのパターンを彫り込んだ型を、それより柔らかい相手に圧着してパターンを転写する技術。半導体向けのNILも基本は同じだ(図1)。
ただし、これまでNILの実用化には課題が山積していた。(1)欠陥密度が非常に多い、(2)パターンのハーフピッチ(HP)が20nm前後と非常に微細で、しかも位置合わせ精度が±3nm以下と非常に高い。その結果、非常に高価な位置合わせ装置が必要になる、(3)「マスターテンプレート」は、電子ビーム(EB)リソグラフィーを用いて作製するため、非常に高価になる、(4)レプリカテンプレートの寿命が短い、といった課題である。
今回のSPIEでキヤノンや東芝らは、(1)ウエハー上の欠陥密度が、3次元(3D)NANDフラッシュメモリーの量産に必要な水準の約10倍程度に低減したことを明らかにした(図2)。10年前の2007年当時の水準からは約100万分の1に低減した。
東芝メモリらは、欠陥密度を、2017年内にさらに数分の1に、2019年には、量産に必要な水準の1/10、現行の約1/100にまで低減する目標を立てている。
この目標の根拠の一つは「レプリカテンプレートの製造装置を10年ぶりに刷新する」(東芝メモリ メモリ技術研究所 プロセス技術研究開発センター 技監の東木達彦氏)ことに表れる。これがキヤノンが2017年2月に発表した新しいレプリカテンプレート製造装置の「FPA-1100NR2」である。NIL用テンプレートを製造するDNPは同年3月にこの装置を導入した。東木氏によれば、これまでの10年間、米Molecular Imprints社(現キヤノン)が開発した装置でレプリカテンプレートを作製し続けていた。