図1 性能を確認中の試作品(写真:日立造船)
図1 性能を確認中の試作品(写真:日立造船)
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 日立造船は、“ポストLi(リチウム)イオン2次電池”の有力候補である全固体電池を低コストに製造する技術を開発、開発品を公開した(図1)。電気自動車・ハイブリッド車、家庭・企業・公共施設でのピークシフトやバックアップ用途(定置向け)、太陽光発電システムをはじめとする再生可能エネルギー発電所の出力安定用途などで、2020年以降、既存のLiイオン電池を置き換えていく狙いだ。

 全固体電池は、既存のLiイオン電池では液体の電解質を固体として、正極と負極を含めた部材をすべて固体で構成する(図2)。液漏れの恐れがない上、一般に電解質が難燃性のため燃えにくく、安全性が高い。電解質は、-40℃といった低温でも凍結せず、100℃でもガスにならないため、幅広い温度環境で温度調整装置を使わずに利用できる。充放電時のイオンの移動が限られ、電極や電解質の劣化が抑えられる特徴もあるため、長寿命化しやすい。液体を使わないため、1つのパッケージ内で積層でき、高電圧化、大容量化しやすい。

図2 電解質も固体のため-40~+100℃で充放電可能
図2 電解質も固体のため-40~+100℃で充放電可能
左は試作した全固体Liイオン電池。右は充放電時の電子の流れ。中央の固体電解質を介してLiイオンが負極と正極を往復する。既存のLiイオン2次電池の電解質は液体であり、これが低温や高温での動作を妨げている。全固体リチウム電池の固体電解質は、両極を電気的に分離するセパレーターの役割も担う。(図と写真:日立造船)
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 旭化成、日立製作所、出光興産、村田製作所、ソニー、太陽誘電、トヨタ自動車など多数の企業が開発にしのぎを削っている1)