2016年に本格稼働予定の東北工場(宮城県)
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 Cu-In-Se(CIS)型太陽電池が大きな転機を迎えている。現在市場が最も大きい多結晶Si型太陽電池と比べて、以前から高かった価格競争力に加え、変換効率の点でも追いつき、追い越しつつあるからだ。

 CIS型、またはCIGS系太陽電池は2000年代後半に有望な次世代太陽電池と期待が高まり、世界で数十社のベンチャー企業が出現した。ところが、その多くが実験室での開発成果を量産化できずに消えていった。そのハードルを越え、事業化できたのは事実上、昭和シェル石油の子会社であるソーラーフロンティア1社だ。

 同社は研究開発品では2015年12月に、セル変換効率22.3%を達成(図1)。多結晶Si型太陽電池の研究開発品での最高値である同21.25%を超えた。製品のモジュール変換効率はまだ13%台だが、2016年中にも同15%台、2018年までには多結晶Si型太陽電池の多くの製品を上回る同16~17%の製品を出荷できるとしている。

図1 変換効率22.3%のCIS型太陽電池
図1 変換効率22.3%のCIS型太陽電池
ソーラーフロンティアが2015年12月に発表。(写真:同社)
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 一方、製造コストの低減競争では既に世界トップクラスで、既に定格出力1W当たり約50米セント(約6万円/kW)を実現済みとする。近々に同40米セント、またはそれ以下を実現し、競争力世界一を目指すという。

 CIGS系太陽電池を手掛ける他社が越えられなかった壁を、どのように越え、今後の飛躍に向けてどのような戦略を立てているのか。ソーラーフロンティア 取締役 副社長執行役員 最高技術責任者の栗谷川 悟氏に話を聞いた。(聞き手=野澤 哲生)