2014年6月、革靴を履いた30代の男性が乾いた路面で転倒し、右脇腹の打撲と右膝・右手への擦過傷を負うという事故があった。よくある軽微な事故のようだが、男性が履いていた革靴は買ったばかり。それにもかかわらず、購入から6日間に2回も滑って転倒していた。乾いた路面で短期間に2回も転倒するのは異常として、事故報告を受けた製品評価技術基盤機構(NITE)が調査した。

 この事故は、製品評価技術基盤機構(NITE)が2016年11月に開催した「平成28年度 製品安全業務報告会」においてサイレントチェンジ問題の一例として報告された1)。サイレントチェンジとは、調達している部材の材料やその製造工程がいつの間にか変更されてトラブルの原因となる問題。NITEが本事故の革靴を調べたところ、後述するように靴底の材質が、いつの間にか指定したものから変更されていたことが判明した。

 NITE製品安全センター製品安全技術課主査の片岡孝浩氏は、「サプライチェーンにおけるサイレントチェンジによって不良品が増加しているのではないか」と懸念を示す。「問題となるのはほぼ輸入品」(同氏)というように、サプライチェーンのグローバル化に伴って事故が相次いで発生しているからだ。本誌2015年1月号でもサイレントチェンジ問題を取り上げているが、依然として事故は続いている2)。報告書を基にサイレントチェンジが引き起こす危険性をあらためてみてみる。