本稿は別掲記事を除いて、『日経エレクトロニクス』の2016年12月号の〔「Galaxy Note7」発火問題の教訓〕を再編集したものです。

発売直後から発火事故が相次いだ韓国Samsung Electronics社のスマートフォン「Galaxy Note7」。リコール対応後も事故の報告はやまず、発売開始からわずか2カ月足らずで製造・販売中止に追い込まれた。いまだに原因がはっきりせず、同社を含め関係各所での原因究明が続く。大容量化や小型化が進むリチウム(Li)イオン2次電池に潜むリスクを探る。

 韓国Samsung Electronics社のスマートフォン「Galaxy Note7」発売から間もない2016年8月24日、韓国のオンライン・コミュニティーサイトに「充電中にGalaxy Note7が爆発した」という書き込みと写真が投稿された。写真の端末は左半分が焼け焦げ、ディスプレーも粉々になっていた。その後、各地で「Galaxy Note7の2次電池から発火した」という写真がオンライン・コミュニティーサイトに登場、同社は端末を回収して原因調査に乗り出した。

 同年9月2日、同社は発火の原因について「Galaxy Note7の2次電池に問題があった」と発表し、「Galaxy Note7には、韓国Samsung SDI社もしくは中国Amperex Technology Limited(ATL)社のリチウム(Li)イオン2次電池を採用したが、Samsung SDI社の2次電池で問題が生じた。セル内部の極板が押され負極と正極が接触、過熱した」と説明した(図1)。Samsung SDI社は携帯機器や電気自動車(EV)、電力貯蔵用大容量ストレージなどのLiイオン2次電池を手掛ける大手メーカー。ATL社はTDKが2005年に買収したメーカーだ。

* サムスン電子ジャパンの広報担当者によれば、「製造工程上の問題による交換ではない」という。そのため、該当ロットのみでなく「出荷品全数を対象に回収・交換した」(同社)。
図1 韓国Samsung Electronics社の「Galaxy Note7」の分解写真
図1 韓国Samsung Electronics社の「Galaxy Note7」の分解写真
5.7インチ型の有機ELディスプレー(AMOLED)にスタイラスペン入力を組み合わせたもので、虹彩認証機能やIP68の防水防塵機能を盛り込みんだハイエンド・スマートフォンである。アプリケーションプロセッサーなどの冷却用にヒートパイプも備える。3500mAhの大容量電池や、急速充電機能、ワイヤレス給電機能も売りとしていた。 写真:米iFixit社
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