2015年2月、低レベル放射性廃棄物入りのドラム缶を運ぶために使う輸送容器で、容器の蓋を固定するボルト(蓋ボルト)が折れているのが見つかった。これを受けて輸送容器を保有する原燃輸送(本社東京)が全国の輸送容器の蓋を調べたところ、計5本の蓋ボルト折損が確認された。そこには、基本的な材料知識の欠落が潜んでいた。

 輸送容器は、固化した低レベル放射性廃棄物(以下LLW)を封入した200Lドラム缶を8本、まとめて運ぶための箱形の容器(図1)。普段は原燃輸送の管理センター(青森県・六ヶ所村)で保管されており、空の状態で原子力発電所に運ばれる。発電所でドラム缶を収納した後、海上輸送を経て六カ所村の埋設施設に輸送してドラム缶を取り出す。空になった輸送容器は再び管理センターに戻り、屋外で保管するというサイクルを繰り返す。

図1 LLW輸送容器
図1 LLW輸送容器
低レベル廃棄物を密閉した容量200Lのドラム缶8本を収納できる。蓋と本体は蓋ボルトによって4カ所で締結されている。本体側締結部はフィッティングプレートと呼ぶ部品が取り付けられている。写真はドラム缶の収納の様子。報告書を元に本誌が作成。
写真:国土交通省
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 折れた蓋ボルトが見つかった輸送容器は、いずれも保管中(LLW入りのドラム缶を収納していない状態)のものであり、輸送業務に支障を来したり、外部へ放射性物質が漏洩したりといった安全上の問題はなかった*1。しかし、事態を重視した国土交通省は、原燃輸送に対して原因究明と再発防止策の検討を指示*2。同社は2015年8月に調査報告書(以下、報告書)をまとめた。その後、同年6月下旬から中止していたLLWの輸送業務を、同年9月に再開している。報告書を基に事故の原因を解説する1)

*1 LLWの輸送の前後には蓋やボルトを点検しており、輸送時には折損はなかったと考えられる。
*2 原燃輸送は、LLWをはじめとする放射性物質の陸上・海上運送を担っている。