ローラーコースターの走行中、乗客を座席に拘束する器具のロックが外れる──。当事者にしてみれば、生きた心地がしなかっただろう。事故の直接的な原因は、あくまでロック機構部品の加工不備。とはいえ、設計や運用にも改善の余地はありそうだ。

図1 ループ・スクリューコースター
図1 ループ・スクリューコースター
らせん状に360°回転する地点を過ぎた直後に事故が起きた。出典:昇降機等事故調査部会1)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 コースターの外観
図2 コースターの外観
ハーネスで乗客を座席に拘束する。出典:昇降機等事故調査部会1)
[画像のクリックで拡大表示]

 2012年9月30日、「西武園ゆうえんち」(埼玉県所沢市)のローラーコースター型設備「ループ・スクリューコースター」で事故は発生した(図1)。乗客を座席に拘束する器具(ハーネス)のロックが走行中に外れたのだ(図2)。

 ループ・スクリューコースターは、垂直方向および“らせん”状に360°回転するコースを特徴としていた。コースの全長は876mで、ハーネスのロックが外れたのは始点から380mほどの地点である。ハーネスの他に乗客を固定するものはなく、この時点で乗客はコースターから放り出される恐れがあった。だが、垂直方向やらせん状に360°回転する地点は既に通過しており、そこから終点までコースターが大きく回転したり傾いたりすることはなかったので、乗客は被害を受けずに済んだ。コースターは6両編成。各車両の定員は4人で、前後2列、各列に2つの座席がある。ロックが外れたのは、前から2両目の前列右側の座席だった。

 この事故を受けて、国土交通省の社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会が現地調査を実施。2016年2月29日に事故調査報告書を公表した1)