「日経ものづくり」2017年11月号の特集2「デジタル化で激変する製造業 「FACTORY 2017 Fall」詳報」を2回に分けて先行公開した記事の後編です。

スマート工場をはじめとする、製造業のデジタル化をテーマとするイベント「FACTORY 2017 Fall」が2017年10月11〜13日に東京ビッグサイトで開催された。AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、ロボットなどの活用によって、製造業の現場はどう進化するのか。そして、製造業のビジネスモデルはどう変わるのか。各分野のキーパーソンが登壇したオープニングセッション/基調講演/テーマセッションと、最先端の技術が出そろった展示会から、ものづくりの将来像を占う。 (取材班)

ヤマハ発動機の村松啓且氏
ヤマハ発動機の村松啓且氏
(写真:菊池一郎)

 AIやIoTの活用がいち早く進んでいるのがロボットである。既存のロボットメーカーや先端技術に強みを持つベンチャー企業が新機軸を打ち出している。

ロボットをもっと使いやすく

 既存のロボットメーカーでは、ヤマハ発動機が「Advanced Robotics Automation Platform」と呼ぶ新しいロボットシステムを2017年度から出荷している。これは、ロボットやコンベヤー、それらを制御するコントローラー、プログラム/HMI/ネットワークの開発環境などを包括的に提供するものである3)

 その狙いを同社IM事業部FA統括部統括部長の村松啓且氏は、「ロボットで自動化したいことは増えているのに、それができる技術者は減っている。もっとロボットが使いやすくならないと、生産現場の自動化は進まない」と語る。

 ただし、「ロボットを買っただけで自動化できるわけではない」(村松氏)。目的に合わせた自動化ラインを設計する必要がある。この部分にかかる手間やコストが大きいために、ロボット活用が進まない状況にあるという。具体的には、ロボット周辺の搬送路などの設計、配線や配電盤の設計、プログラムの作成などについて、「もっとシンプルにしたい」「コストを下げたい」といった要望が多い。

 Advanced Robotics Automation Platformは、そのような要望に応えると村松氏は言う。その特徴は、1台のコントローラーで自動化ライン全体を統合的に制御できることである。従来はロボットやコンベヤーごとに専用のコントローラーを用意し、配線でつなげて自動化ラインの制御を実現していた。Advanced Robotics Automation Platformのコントローラーは、最大64個のロボット(または255個のモーター)を制御可能なので、自動化ラインに求められる同期制御や補間制御を簡単に実現できるという。