自動運転に不可欠とされる高精度地図をめぐる競争が激化している。先行する欧米勢を捕捉するべく、日本はオールジャパン体制で挑む。まずは国内の主要高速道路を2018年までに網羅する計画だ。ただし、事業の採算性やプローブ情報の扱いなど不透明な部分も少なくない。

写真提供:ゼンリン、HERE社、トヨタ自動車、Audi社
写真提供:ゼンリン、HERE社、トヨタ自動車、Audi社

 自動運転向けの高精度地図をめぐる動きが活発化している。三菱電機と地図関連5社(ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、トヨタマップマスター)は2016年6月、国内自動車メーカー9社とともに、高精度地図の事業化を検討する「ダイナミックマップ基盤企画(DMP)」を設立した。2018年の高精度地図の実用化を目指す。

 三菱電機と地図関連5社は2015年にコンソーシアムを組織し、内閣府が主導するプロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム」の中で高精度地図の整備に関する調査を受託して検討を進めた。DMPはその成果を踏まえ、地図の整備や実証、運用に向けた検討を行う。それらの検討結果を基に、2017年中にも事業会社が設立される見通しだ。

 日本での地図整備が“オールジャパン”体制でDMPに一本化されたのに対し、海外では地図会社による競争が激化している。目標は同じく2018年の実用化だ。ドイツの自動車メーカーAudi社、BMW社、Daimler社の企業連合が、2015年にフィンランドNokia社の子会社である地図大手のドイツHERE社を31億ドル(約3490億円)で買収。そのHERE社が、2016年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2016」で「HD Live MAP」と呼ぶ高精度地図のシステムを発表した。

 さらに、同じく地図大手のオランダTomTom社も地図作成の技術でドイツBosch社と提携するなど、自動車業界との距離を縮めている。