クルマがセンサーの塊になりつつある中で、“名脇役”であるミリ波レーダーが着々と進化している。LiDAR(レーザーレーダー)やカメラと比べると地味だが、自動運転車で車両周囲を監視する上で欠かせない存在だ。特に、広い検知範囲を必要とする交差点での事故防止で威力を発揮する。2020年ごろを目処に、ミリ波レーダーの世代交代が起こりそうだ。

写真提供:Audi社、NXP社
写真提供:Audi社、NXP社
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 トヨタ自動車が2017年秋に発売する新型セダン「レクサスLS」で注目すべきは、前部バンパーの左右にミリ波レーダーを搭載した点だ(図1)。車両の前側方を監視するセンサーとして働く。

図1 4個のミリ波レーダーで車両周囲を隙なく監視
図1 4個のミリ波レーダーで車両周囲を隙なく監視
トヨタ自動車の新型セダン「レクサスLS」は、車両周囲の4カ所に24GHz帯の準ミリ波レーダーを配置した。特に前側方の2個はトヨタの量産車として初めて搭載する箇所で、交差点での衝突警告や操舵制御による衝突回避などに用いる。
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 「自動運転につながる技術として、全方位を監視できるセンサーを搭載した」。トヨタの専務役員で安全技術開発の責任者を務める伊勢清貴氏はこう語る。後側方を監視するミリ波レーダーは先代LSを含めて多くの車両に搭載されているが、トヨタが前側方の監視用にミリ波レーダーを配置するのは今回が初めてだ。

 トヨタの安全技術は、「定量的な事故形態のデータに基づいて、交通死亡事故を低減できる技術から優先して導入していく」(伊勢氏)という方針に則る。日本の類型別交通死亡事故は「歩行者」「車線逸脱」「交差点」の順で多い(図2)。既に、歩行者を対象とした自動ブレーキや白線を検知する車線逸脱防止機能は車両に搭載してきた。

図2 次に解決すべき課題は交差点事故
図2 次に解決すべき課題は交差点事故
日本の2015年における類型別交通死亡事故件数の割合を示した。歩行者を対象とした自動ブレーキや車線逸脱防止機能は搭載が進みつつある。図は2016年内閣府交通白書のデータを基に作成。
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 そして今回、新型レクサスLSで交差点事故の防止に向けた取り組みに着手したわけだ。前部バンパー左右のミリ波レーダーを使って前側方の状況を把握し、交差点での車両との衝突を防ぐように警告を出せるようにした。