人工知能(AI)は確かに夢の技術である。だが、AIを使えば自動運転車を簡単に実現できるわけではない。自動運転ソフトウエアの性能を高めるべく、トヨタ自動車を始めとするメーカー各社が地道な取り組みを始めている。ソフトウエアの仕上がりがクルマの性能を左右する時代に突入した。

 「これは知性を競うレースだ」――。自動運転車を使ったレース「ROBORACE」が、早ければ2016年秋にも始まる(図1)。車両に人は乗り込まず、人工知能(AI)を使ったソフトウエアがクルマを操る。レースに出場する全ての車両が同じハードウエアを使うため、自動運転ソフトウエアの優劣がレースの勝敗を決めるのだ。

図1 AIがクルマを操るレースが始動
図1 AIがクルマを操るレースが始動
(a)自動運転車を使ったレース「ROBORACE」の車両デザイン。(b)ROBORACEのCEOを務めるDenis Sverdlov氏。
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 ROBORACEのCEO(最高経営責任者)を務めるDenis Sverdlov氏は、これまでの自動車レースとは一線を画する取り組みを冒頭のように表現した。レースでは、10チームが2台ずつ、合計20台を走らせる計画である。

 ROBORACEが示すのは自動車の未来だ。20台のマシンが抜きつ抜かれつの激しいバルトを繰り広げる。すぐに衝突を起こしたり、互いに牽制しすぎてレース速度が上がらなかったりする可能性も十分にある。

 過去、クルマはハードウエアの塊だった。それが、日に日にソフトウエアの比重が大きくなり、自動運転時代ではソフトウエアの性能で主役の座を奪い合うのは間違いない。だが、AIは魔法ではない。一つひとつ問題をクリアすべく、自動運転ソフトウエアの地道な開発が動き始めた。