2018年に中国で導入が始まる「NEV(New Energy Vehicle)規制」。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などの生産・輸入を一定の割合で義務付けるものだ。各社は対応を急ぐが、攻勢をかける欧州と中国の自動車メーカーに対して、日本勢は押され気味に映る。それでも後退するわけにはいかない。環境規制を乗り越えて競争力をつけ、世界市場に打って出られるか。模索が本格化してきた。

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 「中国でトップになれば、世界の電気自動車(EV)市場でもトップになれる」。日産自動車の専務執行役員で中国事業を統括する関潤氏がこう意気込むように、電動車両を巡る覇権争いで、中国が最重要市場になってきた。

 2025年に年間100万台のEV販売を目標に掲げるドイツVolkswagen(VW)社も、中国市場に傾注する姿勢を示す。VWブランドCEO(最高経営責任者)のHerbert Diess氏は、2017年4月の「上海モーターショー2017」で、「100万台のうち60%は中国市場で売る」と語った。

 年間60万台ものEVを中国で販売する戦略を披露したVW社は同年5月、ある“事件”を起こした。中国政府が長年にわたって海外の自動車メーカーを縛ってきた「合弁規制」を、実質的に緩和させてみせたのだ。

 中国の江淮汽車(JAC)は5月22日、「VW社とのEV合弁会社の設立が許可された」と明かした(図1)。VW社はすでに上海汽車(SAIC)、第一汽車(FAW)とそれぞれ上海大衆汽車(上海VW)、一汽大衆汽車(一汽VW)を設立済み。中国政府はこれまで、海外の自動車メーカーに中国で許可する合弁会社は最大2社までと規制していた。

図1 VW社が中国でEV専業の合弁会社を設立
図1 VW社が中国でEV専業の合弁会社を設立
2017年5月22日、中国国家発展と改革委員会から合弁会社の設立や工場の建設の許可を得たことが分かった。パートナーは江淮汽車(JAC)で、2016年9月に提携を発表していた。
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 VW社にとって江淮汽車との合弁会社は3社目となる。EV専業メーカーとはいえ、異例の設立許可となった。新会社の名称は「江淮大衆汽車」。両社が提携を発表したのが2016年9月で、2018年にはEVの量産を始める計画だ。この早業ぶりに対してある日系メーカーの幹部は、「VW社の巧みな戦略と、中国政府のEVを普及させたいという本気度がはっきりと表れた」と舌を巻く。