日産自動車は2016年4月、2007年の発売以来、最大規模となる改良を施した「GT-R」の2017年モデルを発表した(図1)。エンジンの最高出力を15kW高めた他、変速機の改良により、走行性能を向上させた。
新型GT-Rは、先代の2015年モデルからエンジンの最高出力を15kW向上させて421kWに、最大トルクを5N・m向上させて633N・mにした(表)。加速性能の向上に加え、変速を円滑にして乗り心地を高めている。
エンジンと変速機は、排気量3.8LのV型6気筒ツインターボエンジンに、6速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を組み合わせた(図2)。ハードウエアは従来と同じものを使用している。パワートレーン性能の向上は、それぞれを制御するソフトウエアの改良によって実現した。
その一つが、「気筒別点火時期制御」という技術である。気筒ごとに点火する時期を調整して、それぞれの気筒の出力を高める手法だ。エンジン用ECU(電子制御ユニット)にプログラムした「点火時期マップ」に合わせて、高出力が得られる点火時期に調整する。
気筒ごとに入る混合気の割合や流速が異なるため、適した点火のタイミングも気筒ごとに異なる。点火時期を早めればピストンがより上死点に近いところで燃焼でき、出力が高まる。燃焼エネルギーを効率良く膨張行程に利用できるためだ。しかし、点火時期を早め過ぎるとノッキングが起こりやすくなるため、ノッキングを検知するとその気筒の点火時期を遅らせて対応する。