「『自工程完結』は製造現場だけのものではない。日本メーカーの課題であるホワイトカラーの生産性向上にも大いに役立つ」。こう強調するのはトヨタ自動車の技監で日本科学技術連盟の理事長でもある佐々木眞一氏だ(図1)。

図1 トヨタ自動車の技監の佐々木眞一氏
図1 トヨタ自動車の技監の佐々木眞一氏
日本科学技術連盟の理事長も務め、「クオリティフォーラム2016」では自工程完結に関して講演した。
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 2016年11月下旬に日本科学技術連盟が開催した「クオリティフォーラム2016」では、「自工程完結のホワイトカラーへの適用」をテーマに、佐々木氏などトヨタ自動車で改善活動を推進してきた幹部らが講演した。自動車メーカーや部品メーカー、電機メーカーなど幅広い分野の製造業の関係者が約200人集まり、会場は満席だった。

 注目を集めるトヨタ自動車の自工程完結とはどのような経営手法なのか。もともとは1996年に製造現場で導入が始まった改善手法だ。

 トヨタ自動車は1937年の創業以来、「品質は工程で造り込む」「不良品は次の工程に流さない」といった考え方を大事にしてきた。何か問題があったら、ラインをまず止めて、原因究明と再発防止に取り組み、次から同じ問題を起こさないという方針だ。これはトヨタ生産方式の基盤となるもので、高い品質を実現する原動力になっていた。

 しかし1980年〜90年代に電子化などによりクルマが高度化し、生産もグローバル化する。いつの間にか品質を工程で造り込むという考え方は「心掛け」のようになり、結局は後工程における検査に頼るようになっているケースが目立つようになっていた。

 こうした中で「不良品を出さない、後工程に送らない」という原点を再強化する目的で始まったのが自工程完結だ。

 まず1996年時点で「コロナ」などを生産していた堤工場で「車両の水漏れゼロ」を目指すプロジェクトから始まった。

 それまでは完成車検査で大量の水をシャワーのようにかけることで、水漏れがないかを検査していたが、この検査が不要になるくらい高い水準の品質を、その前工程で実現しようと取り組んだ。