「本当は我々がチャレンジャーのはずなのに、業界最大手のトヨタさんが一番熱心に会社を変革しようとしている。ここまでやるのかと驚くことばかりだ」。こう話すのはトヨタ自動車と競合する、ある日本の自動車メーカーの幹部だ。

 トヨタ自動車がものづくりの全面的な革新を進めている。それは研究開発、設計、生産、組織、人材まで、クルマ造りのあらゆる領域に及ぶものだ。

 研究開発では2016年1月に人工知能(AI)を研究する子会社の「Toyota Research Institute(TRI)」を米国に設立。米国防総省でAIやロボット技術の研究を指揮してきた第一人者をトップに据え、米国のスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学などとも連携。スター研究者を集め、自動運転から新材料の研究にまでAIを活用しようとする。

 設計では新しいクルマ造りの方針(エンジニアリング・アーキテクチャー)として「TNGA(Toyota New GlobalArchitecture)」を導入。さまざまな車種の違いを超えた部品モジュールの大胆な共用化を進めて、規模のメリットを最大化。高い性能のクルマを低コストで実現することを目指す。

 TNGAでは、第1弾の「プリウス」に続き、2016年12月には多目的スポーツ車(SUV)の「C-HR」を発売(図1)。さらに2017年には「プリウス PHV」や北米の主力車である中型セダン「カムリ」をフルモデルチェンジする際にTNGAを適用する(図2)。2020年には同社が世界で販売するクルマの半分をTNGAの対象車にする計画だ。

図1 多目的スポーツ車(SUV)の「C-HR」
図1 多目的スポーツ車(SUV)の「C-HR」
TNGA第2弾で、プリウスで使う部品モジュールの多くを流用している。
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図2 TNGAによるプラットフォーム
図2 TNGAによるプラットフォーム
プリウス、C-HRに続き、トヨタ自動車の多くの車種に適用していく。
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