今後のFPGAは各種処理のアクセラレーターとして重要なだけでなく、半導体製造技術の開発のけん引役にもなりそうだ。FPGA最大手のXilinx社は微細化で業界の最先端を目指す。Altera社は新たな2.5次元実装手法の実用化で先行する。マイクロプロセッサーとFPGAの1チップ化を見据えた環境の整備も進んでいる。

 FPGAが、新しい半導体技術の開発や実用化を牽引する役割を果たし始めた。FPGA自体の改善だけでなく、半導体プロセスの微細化をリードする立場になりつつある。2.5次元実装の導入や課題の改善、異種チップで構成するSiPの実用化でも最先端を進む。マイクロプロセッサーとFPGA上に実装したアクセラレーターが密に連携する仕組みを整えるなど、1チップ上への集積につながる動きも見えてきた。

「2017年に7nm世代品」を宣言

 新技術の採用に積極的なのが、業界首位の米Xilinx社である。同社は従来から最先端の技術を貪欲に製品に取り入れてきた。例えば2011年には、2.5次元実装技術を利用した28nm世代の製品を出荷した(図1)。チップを2~4枚に分割してSiインターポーザー上に2.5次元実装することで、歩留まりの低さを改善した。SerDesなどアナログ回路を含むトランシーバー回路も別のチップに別のプロセスで製造することで、「製造プロセスの最適化と絶縁性の向上を図れた」(日本法人のザイリンクス)という。他にも、2013年11月にサンプル出荷を始めた20nm世代の製品では、性能をASICに近づける技術を多数投入している。

図1 Xilinx社はいち早く2.5次元実装を採用
図1 Xilinx社はいち早く2.5次元実装を採用
Xilinx社が2010年に発表した28nm世代品のVirtex-7以降、導入した主な新技術を示した。大きな面積のチップを分割し、2.5次元実装でSiPにまとめた(a)。20nm世代のVirtex-UltraScale以降では、30個あるクロック源の位置を自由に配置できるようにした(b)。16nm世代のVirtex-UltraScale+では、FPGAとしては大容量のオンチップメモリーを実装。今後は2017年に7nm世代品を出荷する計画である。(図:Xilinx社の資料を基に本誌が作成)
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 同社は最先端の微細化技術の採用でも、業界のトップグループの一員だ。2015年9月に出荷した製品は、「台湾TSMCとして初の16nm世代品の出荷例となった」(ザイリンクス)。今後は米Intel社をしのいで首位に立つ可能性さえある。2015年5月、Xilinx社はTSMCと共同で、「2017年にTSMCの7nm世代技術を用いた製品を出荷する」と発表した。16nmの次は、10nm世代をまたいで一気に7nmまで微細化を進める腹づもりだ。