ニューラルネットを活用した画像認識を、自動車で利用するための半導体製品が出そろってきた。車載向けを前面に押し出した製品と、さまざまな画像処理に使える汎用的な製品の大きく2つに分けられる。この市場で勝ち残った製品が、エッジ側のAIチップのひな型になりそうだ。
ニューラルネットを使った画像認識は計算負荷が非常に大きい。例えばNTTコムウェアが監視カメラ用に開発したDNN(ディープニューラルネットワーク)は、GPUボードが入った普通のパソコンを使って認識させた場合に、1枚の画像を処理するのに0.25秒かかるという注1)。
自動車向けの画像認識は、これよりも高速かつ低電力で実行しなければならない。時速100kmで走行している自動車は、1秒間に28mも進む。万一の事故を避けるには数十ms単位の認識速度が必要だ。加えて、車内での置き場所にもよるが、どこにあっても冷却ファンなしで済ませるには電力は5Wを切る必要があるという。
これらの厳しい条件をクリアし、エッジ向けAIチップのひな型を目指す製品が次々に現れている。大きく分けて、車載が前提の製品と、車載を含めた幅広い用途を目指す製品の2つがある(図1)。前者はDNNの設計を含めたソフトウエア開発の負担を軽減できるが、提供されたソフトを使うだけでは他社製品と差異化が難しくなる。後者の製品は自由度が高い分、DNN開発の能力を自社で獲得しなければならない。どの製品が優勢かを見極めるには、2020年以降と見られる「レベル4」級の自動運転車の実用化動向を見守る必要があるだろう。