車両が軽くならないという悪循環から抜け出す一つの方法が、車体の軽量化をさらに推進すること。
そこでカギを握るのが、アルミニウム(Al)合金や炭素繊維強化樹脂(CFRP)といった軽量材料や先進的な鋼板の、材料・製法の長所を生かした使いこなしだ。
ホンダ「NSX」、トヨタ自動車「プリウスPHV」における軽量材料の活用術と今後登場する新製法を探る。

 「何が最適か、ゼロから(検討を)始めた」。ホンダの新型スーパーカー「NSX」(2代目)の車体の設計に携わった本田技術研究所四輪R&Dセンター第9技術開発室第1ブロック研究員の松浦広和氏の言葉だ(図1)。

図1 ホンダの新型スーパーカー「NSX」
図1 ホンダの新型スーパーカー「NSX」
Al合金を主体としたスペースフレーム構造を採用。初代のモノコック構造を継承せずに、何が最適かをゼロから検討した。
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 同社は1990年、初代NSXを開発。総Al合金化を図った車体は業界から大きな注目を集めた。そこから一転、2代目NSXではAl合金主体のマルチマテリアルの車体に変更(図2)。しかも車体の基本構造も、初代NSXで採用していた板材を主体に殻状の構造体を使うモノコック構造ではなく、柱や梁の役割を果たす管材で骨格を構成するスペースフレーム構造に変えた。

図2 2代目NSXではスペースフレーム
図2 2代目NSXではスペースフレーム
構造を採用した初代は主に板材を使って殻状の車体を造るモノコック構造を採用していたが、2代目で柱や梁の役割を果たす管材で骨格を構成するスペースフレーム構造に変更した。
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 2代目NSXのホワイトボディー(BIW)の質量は216kg。実は、初代よりも16kg重い。ただ、これは多くの軽量化努力の賜物だ。初代と比べて車体寸法も車室容積も、車体で受け止めなければならないシステム出力も大きくなっているからだ。車体寸法とホイールベースは初代が全長4430×全幅1810×全高1170mmと2530mm、2代目が全長4490×全幅1940×全高1215mmと2630mm。システム出力は順に206kWと427kWという。