高齢化が進み、新たな担い手確保もままならない農業分野。センサーやクラウドなどを活用し、これまで勘や経験に頼ってきた作物育成のノウハウをデータ化する動きが活発化している。このデータを利用し、農作業の効率を高めたり、経験が浅い若手農家を支援したりするのが目的だ。その最新事例を取り上げる。

 66.7歳。2014年における日本の農業就労者の平均年齢である。農林水産省の調べによれば、2014年の「農業就業人口」は226万6000人で、このうち144万3000人が65歳以上だという。およそ3人に2人が高齢者になる計算だ。

 農業就業人口も減っている。2009年から2014年で約60万人、20%以上減少した。一方で、その間に増えた「新規就農者」は、27万7700人にとどまる。この新規就農者も、「作物をうまく育てられず、なかなか定着しない」(ある農業協同組合の関係者)。

 こうした日本の農業の現状を打破しようと、ICT(情報通信技術)やエレクトロニクス技術を活用する動きが盛んになっている。農作業を効率化して1人当たりの収穫を増やすだけでなく、若手農家や新規参入者を支援するのが狙いだ(図1)。第4部では、農業の現場を支援するIT企業や農機メーカーの最新事例を追った。

図1 ICTによる農業の見える化で人手不足に対抗
図1 ICTによる農業の見える化で人手不足に対抗
農業分野では、担い手が不足している上、農業従事者の高齢化が著しい。そこで、ICTなどで農作業の進捗状況や作物育成のノウハウなどをデータ化して、そのデータを活用することで農作業の効率化したり、新規に農業に従事する人を増やしたりしている。
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