電動車両の主役を一つに絞れない状況が、部品メーカーを悩ませている。導き出した解が、電気自動車(EV)プラグインハイブリッド車(PHEV)の両方に使える部品だ。象徴的なのが、モーターや減速機などを一体化した電気駆動システム。電動車両の商品力強化という観点では、ワイヤレス給電がいよいよ離陸しそうだ。

 電動車市場を巡る覇権争いが、部品メーカーにも飛び火し始めた。「ここ1年ほど、欧州メーカーの電動パワートレーン戦略がめまぐるしく変わってきた。要求される性能も企業ごとにばらばらで、対応が相当難しくなっている」。ある部品メーカーの技術者はこう打ち明ける。

 電動車両の主役を一つに絞れない状況のため、部品メーカーはEVとPHEVを両睨みできる製品の開発を強化している。「どちらに転んでもいいように、部品に柔軟性を持たせるほかない」(前述の技術者)というわけだ。

FFベースのPHEVが「橋渡し」役に

 揺れ動く自動車メーカーの心情が表れているのが、FF(前部エンジン・前輪駆動)のエンジン車をベースとするPHEVである。利点は、既存のエンジンや変速機をそのまま使えるところ。エンジン車から大きく構造を変更する必要がないので、開発の工数やコストを抑えられる。同一車種で様々なパワートレーンを用意するのに適する。

 後輪側にモーターを設け、リチウムイオン電池を追加するシステムが一般的で、ドイツBMW社やスウェーデンVolvo社など欧州メーカーの車両に多い。EVをラインアップするメーカーでも、電動車の趨勢がはっきりしない現在、こうしたPHEVを用意せざるを得ない。

 特にPHEVは欧州の現在のCO2規制対応で排出量削減に有利であり、部品メーカーに求められるのは「より短期間かつ安価に規制に対応できるシステムを提供すること」(GKNドライブラインジャパン製品開発部eドライブグループプロダクトテクノロジーマネージャーAPOの相川政士氏)である。

 FFベースのPHEVはさらに、EVへ向かう「橋渡し」役としての機能も発揮させやすい。Part2 図1で紹介した、ドイツVolkswagen(VW)社のEV向けプラットフォームには、後輪部にインバーターや減速機などと一体化したモーターが鎮座している。このため、前輪部にエンジンと発電機を搭載すればすぐにPHEVにできる。その逆の道順を辿れば、FFベースのPHEVは容易にEVに進化できる。