NAVIGATOR'S EYE
今回の筆者は、フランスを拠点に欧州における産業技術動向などの情報収集や関係機関との連携役を担っている、NEDO欧州事務所長の永井岳彦氏です。フランスのものづくり再興に向けて加速する動きについてご紹介いただきます。

 欧州において製造業といえばドイツが筆頭に挙がるが、経済規模や技術力で同じぐらい重要な国がフランスである。フランスの製造業と聞いてイメージされるのは、Airbus社やArianespace社などの航空・宇宙産業、高速鉄道「TGV」や原子力発電システムなどの重厚長大なインフラ産業、Renault社やGroupePSA社などの自動車産業、そしてSanofi社をはじめとする製薬産業あたりだろうか。

 これらの伝統的な製造業は、これまで国が主導してきた。しかし、近年の国際競争の激化やフランスの硬直する労働法制と相まって、時代の流れに柔軟に付いていけず、停滞を余儀なくされている。

 フランス政府はその反省を踏まえ、伝統的な製造業だけに頼るのではなく、新たな軸となる分野の創出に向けた製造業改革政策を打ち出した。具体的には、ロボットや人工知能(AI)、自動運転などの技術ベンチャーを対象とした振興策を推進し、活気を取り戻している。本稿では、そのフランスの産業政策を紹介する。