NAVIGATOR'S EYE
 今回の筆者は、技術開発政策に明るい経済産業省の蘆田和也氏です。今夏に帰任するまで約4年にわたって務められた日本貿易振興機構上海事務所でのご経験に基づいて、中国のものづくりを取り巻く最近の動向についてご紹介いただきます。
 

 等身大の中国を捉えることは難しい。

 2015年の中国のGDP(国内総生産)は米国に次ぐ世界2位、自動車生産台数は世界1位で、いずれも日本の2.5倍超に達した。中国経済の規模は拡大し、サプライチェーンも厚みを増している。

 一方で、日本の25倍もある中国の国土は、発展状況が地域ごとに大きく異なる。短期間で成長を遂げる中で、インフラ形成や社会制度づくりが急速に進められ、政府の関与を含めた事業環境の変化も激しい。鉄鋼分野での過剰生産能力の解消、中国東北地方の経済低迷、工場生産分野での人件費高騰などの話題に繰り返し接し、中国あるいは中国ビジネス全体に負の印象を抱く人も多いようだ。

 しかし、筆者が上海を含む華東地域の現場で見てきたのは、このような“まだら模様”を呈する中国において、日系企業各社がそれぞれの切り口で巨大市場での立ち位置の確保に挑む姿だった。高度成長期のマインドで新事業に取り組む中国企業オーナーの存在や、中国社会が消費主導へと変貌(へんぼう)する中ですさまじいスピードで深化を遂げるインターネット社会などに触れつつ、中国のスマートものづくりを展望する。