NAVIGATOR'S EYE
 ここ数年、ドイツの「Industry 4.0(インダストリー4.0)」や米国の「Industrial Internet(インダストリアル・インターネット」など、新しいものづくりの在り方に関心が集まっています。ただし、これらの動きは「工場」などの限られた枠組みで取り上げられていることが多く、既存の枠を超えた影響はなかなか見えていないのが現実です。そこで本コラムでは、産官学の有識者の方々から最新の動向や取り組みを紹介していただくことで、ものづくりの世界で起きつつある変化にどう関わっていくべきか、読者の皆さんと一緒に理解を深めたいと考えています。

 第1回は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)によるビジネスモデルの変革、および日本の製造業の方向性や課題について、「2015年版ものづくり白書」の執筆を担当された経済産業省の川森敬太氏に紹介していただきます。(鈴木俊吾)

 IoTによって製造業に変革が起きようとしている。生産システムの高度化だけにとどまらない、新たなものづくりの枠組みをつくろうとする取り組みが、世界で急速に進んでいるのだ。2015年6月に閣議決定した「ものづくり白書」でも、IoTは主要なテーマの1つだった。そこで本稿では、ものづくり白書の分析に基づいて、IoTが製造業に及ぼすインパクトや、日本の製造業が乗り越えなければならない課題について述べていく1)