NAVIGATOR'S EYE
ドイツや日本以外の国々でも、新しいものづくりの在り方に関係した様々な動きがあるようです。本コラムではこれから数回にわたり、それらの動きについて取り上げていきたいと思います。今回の筆者は、米国で設立されたIndustrial Internet Consortium(IIC)の活動に参加されている横浜国立大学の浅井龍男氏です。IICの狙いやその活動、今後の展望などについてご紹介いただきます。

 スマート化は、情報通信技術の利用による社会基盤やビジネスの高度化・変革を意味するが、その研究開発の中心地である米国の動向を看過するわけにはいかない。そこで本稿では、米国におけるスマート化の推進主体およびその活動内容を紹介するとともに、日本の製造業への影響を考えていく。

 米国の研究機関やビジネスの現場は、世界中の才能が集まる場だ。彼らの多くは、自身の出身国にその影響を伝えていくことになる。つまり、米国の動向を見ることは、世界の動向を見ることでもある。当然ながら、日本にも大きな影響を与えるはずだ。

 米国の研究開発の主体は、連邦政府や大学、企業、財団である。そこでは、研究開発成果の社会的な意義やビジネス化への大きな関心を背景に、技術の標準化や普及のための仲間づくりを進めることが多い。従って、研究開発そのものだけではなく、仲間づくりに向けた団体の性格や組織運営の目的・方法論の進化も見ておく必要があるだろう。

 特に、スマート化の推進団体が持つべき能力は、オープンイノベーションの場を提供することだと筆者は考えている。本稿では、その能力に優れる「Industrial Internet Consortium」(以下、IIC)をベンチマークすることによって、オープンイノベーションに必要な要件を検討する。