NAVIGATOR'S EYE
今回の筆者は、制御と安全のエキスパート企業として業界のけん引役でもあるIDECにおいて、国際標準化戦略や知財戦略を統括し、国際会議などの場でも活躍されている土肥正男氏です。これからの時代に必要となる新しい安全の考え方とその実現に向けた取り組みについてご紹介いただきます。

 ものづくりのスマート化によって、「安全」についても新しい時代が始まろうとしている。例えば、スマートものづくりの大きなテーマの1つに「人とロボットの協業」が挙げられる。だが、従来の安全の考え方では、人とロボットが協業するなどということはあり得なかった。それを実現するには、安全の考え方を変えるとともに、そのための新しい安全技術が必要になる。従って、これは「安全革命」ともいえる。

 そもそも安全とは、どのような状態を指すのか。安全についてのあらゆる国際標準の指針である「ISO/IECガイド51(安全側面─規格への導入指針)」では、次のように定義されている。「許容不可能なリスクがないことであり、許容可能なリスクとは現在の社会の価値観に基づいて、与えられた状況下で、受け入れられるリスクのレベルである」。つまり、安全とは、時代とともに変化する概念なのである。そこで本稿では、スマートものづくりを支える新しい安全の考え方と安全技術について述べていく。