ものづくりや社会全体のスマート化に向けて、データの重要性がますます高まっている。例えば、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)の分野では質の高いデータを大量に集めることが鍵を握っているとされており、データの収集が企業や国にとって重要な課題となっている。
これに伴って、データの取り扱いに関するルールも整備されつつある。日本国内だけではなく、欧州連合(EU)や米国、経済協力開発機構(OECD)、アジア太平洋経済協力(APEC)などにおいても、個人情報保護制度の見直し・整合化が進んでいる(表1)。
その背景には、個人情報を取り巻く環境の変化がある。具体的には、[1]スマートフォンや防犯カメラ、IoT機器(ウエアラブル端末、スマートメーター、ホームオートメーション機器、車載センサー)など個人情報の収集手段が高度化している、[2]SNSをはじめ個人によるデータの公開や共有化が一般的になっている、[3]クラウドコンピューティングなどによる越境データ流通が増加している、といった動向が挙げられる。消費者側から見ると、ITの急速な進化やグローバル化で、個人の権利利益が侵害されるリスクが拡大しているといえる。だからこそ、個人情報保護制度の見直し・整合化が世界的に検討されているのだ。
ものづくりのスマート化と個人情報の保護に直接的な関係はないように思えるかもしれない。しかし、スマート化によってさまざまなモノやシステムが「つながる」ようになると、実は意識していないところで個人情報を含んだデータを活用していたということが起こり得る。さらに、個人情報の定義自体も変化してきており、従来は個人情報と考えられていなかったデータが、今後は個人情報と判断される可能性もある。
そこで本稿では、ものづくりのスマート化を推進する上で不可欠なデータ活用に関して、データの取り扱いに関するルールの最新動向や、留意すべきポイントを具体的な事例などに基づいて紹介していく。