デザインで色を指定するときには、色見本を見て選び、選んだ色見本を人に渡すことで選択結果を伝える。ところが「触覚については、その“見本帳”がない」(NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部感覚表現研究グループ主任研究員の渡邊淳司氏)。人がある時、あるところで感じた触覚がどんなものだったのか、的確に表現して他の人に伝達する手段がまだ存在していない。

 そこで、触感の“見本帳”を何らかの形で用意することが、触覚についてのデザイン・設計を成立させる上で最初に取り組むべきことになる。色の体系のように、全ての人が感じるあらゆる触感をカバーした完全な体系がいきなり出来ることは、望み薄と言わざるを得ない。しかしそれでも、企業や業界ごとに、取り扱う範囲を限った“見本帳”があれば役に立つのではないか──というのが渡邊氏らの考えだ。