エンジン部品をアルミニウム合金製から樹脂製に置き換える──。住友ベークライトがユニークなテーマの研究開発を進めている。軽量化に加えて、性能向上も見込めるからだ。

 具体的にはドイツBMW社の2輪車に搭載する排気量650ccの水冷1気筒エンジンのシリンダーを覆うシリンダーブロックの一部(ハウジング)を、アルミ合金製から熱硬化性樹脂のフェノール樹脂コンポジット製に代替することを試みた(図1)。

図1 エンジンのシリンダーを覆うフェノール樹脂コンポジット製のハウジング
図1 エンジンのシリンダーを覆うフェノール樹脂コンポジット製のハウジング
(a)BMW社の2輪車エンジンに搭載された状態。(b)ハウジング本体。
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 住友ベークライトが開発したフェノール樹脂コンポジットは、炭素繊維で強化したタイプと、ガラス繊維で強化した2つのタイプの合計3種類がある。2015年3月と11月にドイツFraunhofer研究開発機構と共同で、樹脂製ハウジングを搭載したエンジンの性能を、試験装置を使い検証した。

 軽量化に関しては、アルミ合金製(2354g)と比べて、フェノール樹脂を炭素繊維で強化したタイプの質量は1704gで28%減らすことができた。同じくガラス繊維で強化した2つのタイプでは、軽い方の質量が1972gで16%削減できた。軽量化には炭素繊維を使う方が有利だが、量産を視野に、コストを低く抑えられるガラス繊維を使うタイプも開発したという。