工場の生産設備がネットワークにつながり、大量の情報が瞬時に行き交うようになったとしても、実際に物を造る現場が変わらなければ、スマート工場は絵に描いた餅に終わる。情報量が10倍になったからといって、それだけで加工速度も10倍になるわけではない。スマート工場を実現するには、ITの活用に加えて、加工技術の進歩が不可欠だ。

実物に応じた最適なパスを作成

 コマツでは、スマート工場の取り組み「KOM-MICS(コムミックス)」の一環として、既存の加工技術の生産性を高めようとしている。その一つが、3D計測技術などを活用した機械加工の最適化である(図1)。

図1 機械加工の最適化
図1 機械加工の最適化
鋳造部品の機械加工において、設計データ(3Dモデル)と実物データ(3D計測データ)に基づいて最適な加工手順(パス)をリアルタイムで作成することで生産性を高める。コマツの資料を基に本誌が作成した。
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 同社の主力製品である建設機械では、多数の鋳造部品や鍛造部品を使っている。その機械加工には、まだまだムダが多い。なぜなら、設計寸法に対して実物のバラつきが大きいからだ。建設機械に使う大型の鋳造部品や鍛造部品ともなれば、「寸法が10mmくらい違うことも珍しくない」(コマツ執行役員生産本部生産技術開発センタ所長の栗山和也氏)。加工手順(パス)を作成する段階では、寸法のバラつきを考慮して余裕のあるパスを設定するので、どうしてもムダな非加工時間が生じる。

 そこで同社は、加工直前に部品を3D計測し、実物の寸法に基づいて適切なパスをリアルタイムで作成することで、機械加工を最適化しようとしている。いわば、実物に応じてパスをカスタマイズしているのだ。これによって、非加工時間を減らし、生産性を高められるという。