「工場の『つながる化』によって、これまでにない新たな生産改革に着手する」。2015年6月、コマツがIoT(Internet of Things)を最大限に活用したものづくりの強化策をぶち上げた。

 その拠点となるのが、同社大阪工場の敷地内にある「生産技術開発センタ」だ(図1)。生産技術の開発体制強化を目的として2013年10月に設立された、生産技術の“総本山”である。同センタの実験棟には、実際の工場と同じように工作機械やロボットといった生産設備がズラリと並ぶ(図2)。その全てに、無線通信用のタブレット端末が取り付けられている。詳細な稼働状況をリアルタイムで把握するためだ。

図1 コマツの「生産技術開発センタ」
図1 コマツの「生産技術開発センタ」
生産技術の開発体制を強化するために、2013年10月に設立された。
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図2 「生産技術開発センタ」の実験棟
図2 「生産技術開発センタ」の実験棟
スマート工場の実現に向けて開発した生産設備が並んでいる。
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 コマツが思い描くスマート工場。そこでは、あらゆる生産設備をネットワークにつなげて、生産に関する情報を可視化する。集めたデータは、品質や生産性の向上に生かす。こうしたスマート工場の概念を、同社は「KOM-MICS(コムミックス)」と呼ぶ。

 実は、同社では数年前から溶接ロボットでKOM-MICSの考え方を先行的に取り入れていた。そこで期待通りの成果が得られたため、今後は工作機械も含めた生産設備の稼働状況の可視化などを本格的に推進していくことを決めた。現在、同社は世界に23の製品工場と20のコンポーネント工場がある。それらの工場で稼働している全ての生産設備がKOM-MICSの対象となる。

 既に、同社には「KOMTRAX(コムトラックス)」という製品遠隔監視システムがある。同社の製品である建設機械の稼働状況を把握し、顧客の生産性向上に役立つような助言をしたり、部品の適切な交換時期を顧客に知らせたりするものだ。このKOMTRAXによって同社の建設機械は他社製品にない価値を生み出すことが可能になった。KOMTRAXが市場情報をつなげるシステムだとすれば、KOM-MICSは生産情報をつなげるシステムといえる。今後は、KOMTRAXとKOM-MICSの両輪で新たな価値を創出していくという。