三菱自動車やスズキの燃費不正に代表される会社都合の不正問題は、決して人ごとではない――。約8割の技術者が不正が「起こっている、起こった」「起こり得る」と答えたことを先に紹介した。ここでは、その背景に何があるのか、技術者はどのような業務環境に置かれているのか、本誌が実施した技術者へのアンケート調査結果から探る。

  • 「上位職に対して物言えぬ風土の改革」(自動車メーカー、生産技術)
  • 「ノーといった人間を不遇に扱う、左遷する。イエスといって嘘がばれた場合、会社でなく個人の責任とし、個人に刑事責任を課すよう社内の法務が動く」(自動車関連サプライヤー、研究・先行開発)

 これらは、本誌が今回実施した技術者へのアンケート調査(Part1末尾の「アンケート調査概要」参照)で「不正防止に向けてあなたが会社にこれだけは改善してほしいと思うこと、こうすべきだと思うこと」という設問(自由記述)に対する回答の一部だ。同設問には集計対象592件の約27%に当たる159件の回答が寄せられた。

 三菱・スズキの不正の背景には、本質的な要因として「上司に逆らえない企業体質」「過密スケジュール・リソース不足」が存在するとみられることをPart1で紹介した。本誌が今回実施したアンケート調査でも、一部の技術者の周囲にそれと類似の要素の存在がうかがえることが判明した。

 ここから読み取れることは、三菱・スズキのような技術者による不正は、決して両社だけの特別なケースではなく、他の企業においても発生する可能性を秘めたものだということだ。そう考えると、約8割の技術者が会社都合の不正が身近に「起こっている、近い過去に起こった」「起こり得る」と回答していることも納得できる。