2002年度にスタートしたOKIのEMS事業は、グループ内の注文に頼らず、グループ外の売り上げだけで2015年度に420億円を超えるまでに成長し、実質的な「親離れ」を果たした。ここにきて、次々と他社からプリント配線基板事業などを買収しており、日本の一大拠点に育ちそうだ。

 多くの日本メーカーが国内生産拠点を縮小・撤退させる一方で、沖電気工業(OKI)のEMS(Electronics Manufacturing Servive)事業では国内製造にこだわり、受注拡大を続けている。OKIのEMS事業は、自社の通信機器の国内生産の縮小などを契機に2002年に始まった。余った国内工場の生産能力を埋めるために、自社に頼るのではなく、外に出て注文を取ってこい、というわけだ。

 EMS事業を始めるにあたって決めたのが、中国や台湾などの巨大EMS企業が手掛けるスマートフォンやパソコン、ゲーム機といった、大量生産を前提にしたコモディティー製品にはあえて手を出さないことである。高機能や高信頼性を求め、かつ年産100~1万台ほどの産業機器や計測機器、医療機器などに経営資源を集中している。「海外に持っていけないものを手掛ける」(OKI 執行役員でEMS事業本部長の中野善之氏)ことを方針に掲げる。

 数十層と多層で、かつサイズが大きい高機能のプリント配線基板の製造や、0402サイズの小型部品の実装などの製造技術に強みを持つ。最近引き合いが増えているのが、計測器では数十層のプリント配線基板を必要とする半導体テスター、医療機器では特に高い信頼性を求める「高度管理医療機器」などである注1)

注1)高度管理医療機器とは、リスクの大きさに合わせて医薬品医療機器等法(薬機法)で分類された4つの医療機器クラスのうち、クラス3と4に相当する。クラス3は不具合が生じた場合のリスクが比較的高いもので、透析器や人工骨、人工呼吸器がこれに相当する。クラス4は不具合の発生が患者の生命の危機に直結する恐れがあるもので、ペースメーカーや人工心臓、ステントグラフト(金属製の骨格を持つ特殊な人工血管)などが該当する。