国内半導体業界でも大企業の傘の下から離れて力強く生きていこうとする動きが出てきた。中でも、ビジネスモデルのユニークさから、海外メーカーの技術者も注目する新興企業が、ルネサス エレクトロニクス出身の技術者たちが立ち上げたポコアポコネットワークスだ。

 「ルネサス時代の経験をうまく生かしている。大手通信機器メーカーなどにもガッチリと食い込んでいるようだ」。

 大手外資系半導体メーカーのマーケティング責任者がこのように評するのが、ルネサス エレクトロニクス出身の技術者達が中心となって2015年4月に設立したファブレス半導体企業のポコアポコネットワークスである。ルネサスとは資本関係がない。

 ポコアポコネットワークスが提供するのは、論理IPコアと、それと組み合わせて使う独自DRAM製品である(図1)。論理IPコアは、そのDRAM製品の制御などを担うコントローラーである。このIPコアはFPGAやASICなどに搭載される注1)。ルーターやスイッチ、セキュリティー製品などの用途に向ける。

注1)IPコアは、論理合成可能なRTL形式のデータで顧客に提供する。
図1 IoT時代を見据えて、メモリーの新しい使い方を提案
図1 IoT時代を見据えて、メモリーの新しい使い方を提案
ポコアポコネットワークスは、FPGAなどに直結して使うDRAMの新しい使い方を提案している(a)。同社がIPコアとして提供するコントローラーをFPGAなどに搭載し、同じく同社が供給するpoco-DRAMと組み合わせることで、DRAMの性能向上や経路制御、セキュリティー性に優れた機器を実現できるとする(b)。(写真(b): ポコアポコネットワークス)
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 社名の由来となった「ポコアポコ」は、イタリア語の音楽用語で、「少しずつ」「徐々に」といった意味がある。「我々の技術が市場で少しずつ浸透して、業界標準になることを目指して命名した」(ポコアポコネットワークス代表取締役社長 CEOの武部 秀治氏)。