音声認識技術のキラーアプリの1つは間違いなくリアルタイム音声翻訳だろう。非英語圏の多くの人は、英語やその他の外国語学習に膨大な時間と費用を投じている。その努力が要らなくなる技術が利用可能になれば、我々の人生や世界を大きく変えることは確実だ。世界を旅行する観光客が大幅に増えたり、言葉の壁による誤解や争いが劇的に減ったりすることも期待できる。
この夢が、観光など幾つかの限定的な状況では2019~2020年にも実現する可能性が高まってきた。
テキスト間から音声間には高い壁
Web版の簡易的な機械翻訳サービスについては、GUIベースのWebブラウザーが1993年に登場して間もない時期から、無料で提供されてきた。現時点では、米Google社のほか、米Microsoft社、米Facebook社などITの巨人と呼ばれる企業がテキスト間の翻訳サービスを無料で提供している。
現在無料でサービス提供しているのは、実はデータを集めて、対訳コーパスと呼ぶ統計データを拡充するのが目的だ(図A-1)注A-1)。コーパスはデータが多いほど、翻訳の確からしさが高まるのである。