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 従業員5人のものづくりベンチャーが、家電業界に旋風を巻き起こしている。水深30mまでの耐水性とフルHDの動画撮影が可能な小型デジタルカメラ、折り畳み式電動バイクなど独創的な製品を続々と商品化しているからだ。

 その企業の名はUPQ(アップ・キュー、本社東京)。31歳の中澤優子氏が社長を務める。同氏は2007年にカシオ計算機(以下、カシオ)に入社し、携帯電話機の商品企画を担当していた。念願だった携帯電話機事業に配属された中澤氏だったが、競争が激化する中、カシオは同事業から撤退することを決める。

UPQの中澤優子氏
UPQの中澤優子氏
右手で持っているのがデジタルカメラ、写真左下にあるのが折り畳み式電動バイク。
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 「カシオではもうスマホも携帯も作れない。私の夢、たった5年で終わっちゃった」。こう落胆した中澤氏は2012年にカシオを退職。空間やメニューに関心を持ちカフェを始めた。

 だが、2014年になると3Dプリンターを備えたものづくり拠点が誕生。新しいハードウエアのアイデアを考えるハッカソンも始まり、中澤氏には、再びものづくりをしたいという気持ちが高まってきた。ハッカソンで中澤氏はIoT弁当箱「XBen(エックス・ベン)」を共同提案。それが高く評価され、経済産業省のフロンティアメイカーズ育成事業に採択された。そこでCerevo(本社東京)社長の岩佐琢磨氏と出会う。

* au未来研究所のハッカソンイベントで、中澤氏ら6人が考案したIoT弁当箱。電子部品を組み込んだ弁当箱に、小分けされて取り外しが可能なおかず入れが付いており、他の人のおかず入れと交換すると光るというのが当初のプロトタイプだった。弁当箱をスマートフォンと連動させ、今の気分や食べたいおかず、一緒に食べたい人などを入力するとおかず交換が可能な相手を探す機能なども提案した。

 「面白い商品のアイデアがあれば、中国では1000台から製造できる。スマホやデジカメなどモジュール化されているものは短時間で量産可能だ」。岩佐氏からこう聞いた中澤氏は衝撃を受けたという。5万~10万台単位でないと家電製品の量産は難しいという大手メーカー時代の常識は過去のものになっていたからだ。