MEMS発振器の存在感が高まったことで、発振器の部品選択や活用の幅が広がってきた。水晶発振器にはないMEMS発振器の特徴とそれを生かした使い方が、機器設計者に徐々に意識され始めたためだ。IoT(Internet of Things)機器や医療機器、車載機器で変化が始まっている。
MEMS発振器の存在感や認知度が増してきたことで、発振器の仕様に幅が出て、水晶発振器以外のクロック源を採用する動きが設計者の間に広がっている(図1)。背景には、MEMS発振器など水晶発振器を代替する製品の特徴を生かせる応用機器の開発が盛んになったことがある。
例えば、水晶発振器を凌ぐ小型化や低消費電力化を求めるIoT(Internet of Things)機器やウエアラブル機器にはMEMS発振器。精度よりもEMI(電磁放射)の低さを重視する医療機器には、共振回路を使うシリコン発振器。こうした選択をする事例が出始めた(表1)。
「水晶発振器は安く、品種が多く、入手しやすい。使用実績もある。他の選択肢は考えたことがない」(無線通信モジュールの開発者)。「MEMS発振器の単価が安くても水晶発振器を置き換えるとなれば検証のコストがかかる。こうしたコストや時間まで考えれば既存の水晶発振器で十分」(欧州の電装品メーカーの技術者)。このように考える技術者が少数派になる時期が、いずれ訪れるのかもしれない。