平面から空間へ。ディスプレーが、100年に一度の変革を遂げようとしている。「映像の世紀」と呼ばれる20世紀。テレビやパソコンに映し出される映像は、人類の文化や生活を一変させた。映像は全く新しい娯楽やコミュニケーションを生み出し、時には政治にも影響を与えた。これと同等の革新が早ければ5年後にも“空間ディスプレー”によって起こる可能性が出てきた。

(イラスト:笹沼 真人)
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 昔はテレビのスクリーン上で相撲を見ていたけれど、今では、まるで我が家のリビングルームで力士が相撲を取っているようだ。土俵上の激しいぶつかり合いに、力士の汗が飛び散り、息づかいまで聞こえてくる。リビングの反対側に回ると、向正面から見た状況が分かる。横綱の上手まわしは切れていたんだ─。

(イラスト:笹沼 真人)
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 これが、次世代の“空間ディスプレー”のイメージだ(左のイラスト)。遠く離れた場所での出来事を、丸ごと目の前で再生する。ディスプレーは2次元平面から3次元空間に拡張される。ここに、物体や人などの立体像を空中投影する。遠くの場所の空間が丸ごと再生されるため、あたかもその場所にいるような感覚が得られる。身体は今ここにあるのに、心は遠く離れた場所にあるかのように感じる。まるで幽体離脱を体験した気持ちになる。

 加えて、仮想の再生像が現実(リアル)そっくりになるため、仮想と現実の区別がつかなくなる。これは、人類に新しい視覚体験をもたらす。例えば家やビルの建設予定の更地に、完成後の姿をリアルに浮かび上がらせることができる。ネットショッピングの商品を、さまざまな角度から見て、立体的に確認することも可能だ。おばあちゃんの家に、子供の家族や孫を大集合させることだって、いつでもできる。クルマの助手席に憧れの人を招待することだって難しくない。