画期的な3元触媒の発明で、全盛を極める理論空燃比ガソリンエンジン。しかし、そろそろ主役を譲るときだ。電動化技術と競うには、力不足である。超希薄燃焼エンジンが実現すれば、CO2排出量を格段に減らせる。しかも安く。マツダ、トヨタ、日産、ホンダと役者は揃った。エンジン新時代はもうすぐだ。

 日系自動車メーカー各社が2020年頃、超希薄燃焼ガソリンエンジンを投入する方針だ。理論空燃比(ストイキオメトリー)の2倍以上に達する空気を入れた混合気を燃やす超希薄燃焼(図1)。実現すれば、熱効率を大きく高められる。しかも高価な触媒が必要ないほどに、NOx(窒素酸化物)生成量を減らせる。安くて高効率。電池コストが想定通りに下がらない電動化技術に、真っ向勝負を挑める。

図1 空気過剰率が2を上回る超希薄燃焼へ
図1 空気過剰率が2を上回る超希薄燃焼へ
NOxとCO、HCすべてを安価に取り除ける3元触媒という画期的な発明以来、ガソリンエンジンの主役は理論空燃比で燃やすことだった。だが理論空燃比で熱効率を高める手段は、限界が見え始めている。いよいよ希薄燃焼の時代に入る。しかも空気過剰率が2を上回る「超希薄燃焼」だ。
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 各社の熱効率の目標はおよそ45%。ハイブリッド車用を除く現行エンジンの最高熱効率が36~37%だから、一気に3割近く高める。機械損失などを抑える地道な努力と合わせて達成する。

 Cセグメントのガソリン車のCO2排出量は120~130g/km。熱効率が3割高まり、CO2がその分単純に3割減るとすると、2021年から始まる欧州のCO2排出量規制(95g/km以下)に電動化技術を使わないで対応できる。